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戦国時代、甲斐国で強固な家臣団と統率力で信長・家康を震撼させた武田信玄。戦国随一の強さを誇った孤高の武将の生きざまをダイナミックに描いた。ドラマに登場した正面が100メートルもある壮大な武田館。そのオープンセットは山梨県小淵沢町の依頼を受けてＮＨＫが設計したものだ。しかし時は戦国時代、当時の館というのはほとんど残っていない。そこで美術スタッフが参考にしたのが、江戸時代に描かれた武田館の絵図、福井県が復元した一乗谷朝倉館の50分の1の模型。さらに織田信長が上杉家に送った京都の洛中洛外図が描かれた屏風だった。武田館の平面図の絵図をもとに間取りを決め、柱や壁、天井、床などは朝倉館の模型と洛中洛外屏風絵でディテールを知ることができた。ことに屏風絵には細川管領の館が描かれていて、これが非常に参考になったという。武田信玄の敵である織田信長と上杉謙信が、信玄を描いたドラマに貢献したというのも興味深い。戦国最強ともいわれる武将・武田信玄の生涯を、母である大井夫人が物語るという形式で描かれたドラマ。大井夫人を演じた若尾文子さんがナレーションも担当し、毎回、ドラマを締めくくる「今宵はここまでに致しとうござりまする」は、その年の流行語大賞を受賞したほど話題を集めた。また地元山梨県は、もともと武田信玄のことを“信玄公”“信玄さん”と、尊敬と親しみを込めた敬称をつけて呼んでいた土地柄。それだけに『武田信玄』への熱の入れ方はすさまじいものがあった。日曜日の夜、７時半ごろになるとテレビを見るために家路を急ぐ人が増え、甲府市内では「日曜日の夜8時に外を歩いている人間はおかしい」といった冗談まで出たほど。その人気は山梨県のみにとどまらず、全国でも最高視聴率49.2%、平均視聴率39.2%と、ともに歴代2位の高視聴率を獲得した作品となった。主演の中井貴一さんは当時25歳。この作品が始まってから「あれっ」と思うことが何度もあったとか。それまで仕事をプライベートに持ち込むことは「絶対になかった」と断言する中井さんが、物の考え方や人と話をしていても「どこかで聞いたことあるな」と感じることが増え、セリフで言っていることが自分の言葉になってきていると実感。「信玄公の生き方に僕が重なってきたようでした」と話している。それは、息子・義信を演じた堤真一さんに対しても同じだった。中井さんの実年齢と同じくらいの息子ということで扮装前の堤さんを見ると違和感を覚えるのに、扮装すると息子に見えてくる。一緒に食事をしても「好きなものをたくさん食べなさい」といった気持ちになってしまったとか。「くやしいですね（笑）。我ながらイヤになる」と語っていたが、それだけ信玄公として生きた時間が充実していたということだろう。やがて、ストイックな終生の宿敵長尾景虎（柴田恭兵）と信玄は川中島で激突する。名将板垣信方（菅原文太）、白塗りお歯黒で貴族風の今川義元（先代中村勘九郎）、景虎のアドバイザー直江実綱（宇津井健）など名優たちの演技も見逃せない。このドラマで面白いのは、武将として快進撃を続ける武田晴信（後の信玄）が、その裏で女性たちに悩まされる意外な顔も描かれていること。おここ（南野陽子）との初恋、公家出身の正室三条夫人（紺野美沙子）とのすれ違い、湖衣姫（南野二役）との衝撃的な出会い、勇ましい里美（大地真央）、女子力高めの恵理（池上季実子）など、側室も次々登場。語り役でもある母大井夫人（若尾文子）の「今宵はここまでにいたしとうございまする」は流行語にもなった。すさまじいのは三条の侍女八重（小川真由美）。八重は、三条のためにおここを抹殺、「山中の戦は猿蟹合戦と同じ」と田舎を嫌い、都に帰りたいと陰謀を巡らせる。武田家重臣飯富虎昌（児玉清）を誘惑する八重。好青年役が多かった児玉が、丸い眉を額に描いた美白能面顔の小川にねっとり迫られるシーンにはお色気より妖気が……。ロケ以外の撮影を行うNHKスタジオにも壮大な外観のオープンセットに負けないだけの立派なセットを作りあげた。24将が揃って軍議を開くことができるだけの広々とした主殿は、戦国時代の甲斐の山中の館らしく無骨で地味な雰囲気を心がけた。対照的に信玄の正室・三条が住む裏方は明るく豪華なしつらえだ。武田は甲斐の守護職であり財力もあったはず。公家の娘である三条にふさわしい館を造ったのではと当時の美術スタッフが語っている。また合戦シーンの旗の色にも工夫をこらした。武田24将を色分け、信虎は黒、甘利虎泰が赤といった具合に、たびたび登場する合戦シーンに、旗の色で武将の活躍ぶりを見分けるという楽しみもあった。主要キャストの顔ぶれも多彩だった。最大のライバル・上杉謙信役は柴田恭兵さん。山場となった川中島血戦、信玄との一騎打ちのロケ前夜は少し興奮して寝られなかったとか。現代物や舞台では経験したことのない大芝居にも苦労したそうで「セリフ回しや立ち居振る舞いが大変で、自分の演じているのを見るとダンスを踊っているみたいでした」。ただ、逆にそれを楽しみながら演じることができたと話していた。信玄の軍師・山本勘助を演じた西田敏行さんは、ロケの乗馬シーンで「敦煌帰り（主演映画『敦煌』）なのだから群を抜いて乗馬はうまいだろう」という周囲の目にプレッシャーを感じて、最初のテストでいきなり落馬してしまった思い出がある。結果的には、それで気持ちがほぐれて楽になったそうだ。海道一の弓取り・今川義元を演じたのは中村勘九郎（十八代目中村勘三郎）さんだった。桶狭間で散る義元を「最期はかわいそうに死にたい」と話していたのだが、「なんかバサッとあっという間に殺されちゃったので、次に大河に出るときは大立ち回りをしてカッコよく死にたいですね」。その勘九郎の二男・中村七之助さんが、信玄の嫡男・義信の幼少時代の役で出演。信玄に抱かれて馬に乗り甲府盆地を見下ろすシーンなどに登場した。ほかに当時アイドルの南野陽子さんが、おここと湖衣姫の二役で出演した。

この動画・静止画の放送年： 詳細 国のために骨肉の情を断ち切り、その組織力と統率力で織田信長、徳川家康を震かんさせた武田信玄の生きざまを重厚かつ鮮烈に描く。

戦国時代、甲斐国で強固な家臣団と統率力で信長・家康を震撼させた武田信玄。戦国随一の強さを誇った孤高の武将の生きざまをダイナミックに描いた。 アーカイブストップ » みのがし なつかし： 特集記事から探す. 昭和63年（1988）放送の大河ドラマの第26作。国のために骨肉の情を断ち切り、その組織力と統率力で信長・家康をも震撼（しんかん）させた武田信玄の生きざまを、重厚かつ鮮烈に描きます。母親役の若尾文子が語りも担当し、番組の最後に言う「今宵はここまでに…」が流行語になりました。 番組・ニュース/ 特集記事を探す ジャンル すべてのジャン 番組エピソード.