『斜陽』に繰り返し登場する「蛇」をめぐるゆるやかな考察。「蛇の卵を焼く」ことが一体に何を示唆しているのか。 文学生のふんわり金魚日記 ... (放蕩ごみ野郎の弟・直治の遺書の最後、『僕は、貴族です。』という一文は非常に胸に迫るものがありましたね…) まとめ. 今日は「蛇」というモチーフに着目して簡単にブックレポートを書き残しておこうと思います。(いま鋭意執筆中の卒論もモチーフに関するものなので…)彼の生家は現在この本の名前をとって「斜陽館」という記念館になっています。太宰の代表作の一つで、発売されるなり瞬く間にベストセラーになり、没落していく上流階級の人々を指す「斜陽族」という言葉をも生み出しました。ということがあり、そのためかず子の母は大変蛇を苦手に思っているようです…近所の子どもたちはそれを「蝮の卵だ。」というので、それを信じたかず子は卵を燃やすことにします。(なかなか燃えなくて最終的には地面に埋めるのですが)戦後没落貴族となったかず子とその母は、東京の家を売って伊豆へと引っ越します。いやはや、太宰の書く文の美しさにぎゅーーっと引き込まれてしまいました。そこでついにかず子は東京にいる上原のもとに押しかけ、彼と結ばれます。母や弟を失いながらも、上原の子供を身ごもったかず子は、「古い道徳」に対する革命を掲げ、強く生きていくことを誓います。かず子は直治を介して出会った作家の上原にすがり、3度手紙を出しますが、上原からは返事はありません。しかし卵を焼く様子を母親に見られ、かず子は以下のように思います。かず子は「蛇」のずる賢さを獲得しながら、「蝮」のように力強く、たくましく生きていきます。この物語の冒頭にある「(美しい)蛇の卵を焼く」シーンは、そんな行く末を暗示するようなものではないでしょうか。これは「美しい蛇」とは対照的で、圧倒的にネガティブな文脈で描かれます。また、戦地から帰ってきた弟の直治は放蕩生活を送るばかりで、家計の状況もどんどんひっ迫していきます。tachibanayunさんは、はてなブログを使っています。あなたもはてなブログをはじめてみませんか？蝮は醜悪で、毒を持ち、母親という美しい蛇を食い殺してしまうような存在なのです。その一方で「美しい蛇」であった母や、決して最期まで俗物になりきれなかった弟の直治は、時代とともに死んでいきます。専門が外国文学なので最近はもっぱら翻訳文学を読むことがほとんどで、この『斜陽』でひさしぶりに日本文学に触れましたが….数年前に頭の1/3だけ読んで、何があったかは忘れましたが読み切らないまま中断してしまっていたんですよね。この蛇は決して「ずる賢い」といった描写を与えられることはなく、蛇一般の概念(ずる賢いイメージ)とは一線を画すように描かれています。(放蕩ごみ野郎の弟・直治の遺書の最後、『僕は、貴族です。』という一文は非常に胸に迫るものがありましたね…)私生活に大変難の多い人で、自殺未遂や薬物中毒を何度も繰り返していました。遺体の発見された6月19日は太宰の誕生日で、「桜桃忌」の名で知られています。しかし伊豆の山荘へと帰宅すると、そこでは直治が自殺していました。 そんなとき、戦争で亡くなったと思われていたかず子の弟・直治が家に帰ってきます。しかし、家にはほとんどおらず、東京で荒れた生活を始めました。かず子は、直治の知り合いの上原という男と出会い、ある決意をします。また直治は、遺書で「人間はいつでも死ぬ権利を持っている。しかし母が生きている間は、その権利を使ってはいけない。それは同時に、母を殺すことになるから」と述べています。そんな母に、かず子は尊敬に近い気持ちを抱いています。同時に29歳にもなって母親にべったりくっついて離れようとしなかったり、子供のように駄々をこねたり、異常なほど母親に執着します。恋と革命に生きることを決意したかず子、病気のためなすがままに亡くなった母親、生きるための闘いに敗れて自殺した直治、酒におぼれる上原。4人分の「滅び」が詰まった『斜陽』を、ぜひ一度読んでみて下さい！青空文庫でも読めます。興味深いのは、これを太宰が描いたということです。彼は10番目に生まれた子供なので、両親からは全く相手にされず、乳母（母替わりの女性）に育ててもらったという過去を持っています。これは、実際に体験した人でなければ味わうことのない苦しみでしょう。『人間失格』の主人公・葉蔵の手記に似たものを、直治の遺書からは感じ取れました。かず子は上原の子を身ごもり、「こいしい人の子を生み、育てることが、私の道徳革命の完成なのでございます」と高らかに言います。かず子は古い道徳と戦い、太陽のように明るく生きていくことを誓うのでした。それにともなって、没落していく上流階級の人々を指す「斜陽族」という言葉が生まれたり、国語辞典の「斜陽」に「没落」という意味が加えられたりと、社会に大きな影響を与えました。そんな中で、かず子は上原に3通の恋文を書きました。しかしどれだけ待っても、返事が返ってくることはありません。直治に上原のことを聞くと、いつもと変わらずに作家活動を続けているようでした。初版発行部数は1万部（現在は、初版3000部を発行すれば「売れる作品」という箔が付く）で、版を重ねてベストセラーとなりました。青森県にある太宰治の記念館は、「斜陽館」と名付けられました。伊豆に引っ越してすぐに、母は体調を崩してしまいました。しかし村の名医のおかげで回復し、大事には至りませんでした。この頃から、かず子は生活のために畑仕事をするようになります。このように、ぬるま湯から氷水に落とされた変化こそが、かず子に「生きることは闘いだ」という結論にいたらせたのではないかと思います。29歳の主人公。何不自由なく生活してきたため、世間を知らない。逆境に立ち向かっていく強さのある人物。かず子と直治の母親。高貴で美しい人物で、かず子と直治からは「本物の貴族」と呼ばれている。貴族の家に生まれ、戦後没落してしまったかず子は、家を売って母と伊豆に移り住みます。しかし、移住してきてから母は体調を崩してしまい、寝ていることが多くなりました。それでも、かず子は母を支えて慣れない畑仕事等に精を出します。上原の放蕩癖も、太宰と共通しています。このように、太宰は登場人物に自分を重ねて、『斜陽』を執筆したのです。この小説は、基本的にかず子の一人称で描かれています。ですが直治の遺書が途中で挟まれており、直治が母や姉をぞんざいに扱ったのちに破滅していった経緯や、語られなかった秘密が明かされます。世の中が変わって今までのような優雅な生活ができなくなった時、かず子たちは田舎への引っ越しを余儀なくされたり、農作業をすることになりました。上原は直治の知り合いで、かず子は借金で首が回らなくなっている直治に言われるがままにお金を用意し、上原経由で直治を援助していたのでした。東京の画家で既婚者。毎晩のように飲み歩いて堕落した生活を送る。しかし彼女は、そんな上原を非難しません。生きることは闘いで、酒は上原の生きる上での武器だからです。酒におぼれることによって、なんとか上原は生きていられるのです。坂口安吾、伊藤整と同じ「無頼（ぶらい）派」に属する作家です。前期・中期・後期で作風が異なり、特に中期の自由で明るい雰囲気は、前期・後期とは一線を画しています。太宰については、以下の記事をご参照ください。やがて、白魚のようだった母の手が醜くむくみ、食事を受け付けなくなり、母はついに亡くなりました。状況を受け入れたかず子は、いつまでも落ち込んでいられないと自分を奮い立たせます。そして、恋と革命に生きることを決意します。直治は、貴族であることに嫌気がさすも、完全な俗人にもなり切れなかったため、居場所を見つけられなかったのでした。今回は、太宰治『斜陽』のあらすじと内容解説・感想をご紹介しました。太宰治『斜陽』とは、発売当時、若者を中心に支持されてベストセラーとなった小説です。いつまでも親離れしないかず子の言動に、多少驚くことはありますが、それでもお互いに大切に思い合っていて、本当に理想的な親子だと思います。言葉通り、直治は長らく自殺願望を持ちながら、母が病気で亡くなるのを待ってから実行しました。それを聞いたかず子は、半狂乱になって駄々をこねます。そんなかず子の様子を見て、母は「働かなくていい。物を売って暮らせばいい。高い野菜だって買えばいい」とかず子を慰めるのでした。一晩で1万円（1年は楽に暮らせるくらいのお金）を酒のために使った上原を見て、かず子が思った言葉です。小説の中でかず子と直治は、元貴族という地位にいながらも、俗っぽい所がある人物として描かれます。しかし、母だけは別格の「本物の貴族」という風に言われていて、とにかく高貴で美しいと繰り返し表現されます。かず子は、それまで何不自由なくぬくぬくと育ってきた世間知らずの女性です。「お金がなくても、誰かが何とかしてくれる」「物事がうまく動いてくれる」という風に他力本願な人物です。かず子の弟。貴族と平民の間でさまよって自分の居場所を見つけられず、戦後は放蕩（ほうとう。遊ぶこと）の限りを尽くす。これを知っているのと知っていないのとでは、解釈に差が出てくるので、2回目に読むときは直治目線で読んでみるのが良いと思いました。伊豆での生活は順調に進んでいるように思われましたが、徐々に暗雲が立ち込めます。今までは働かなくても暮らしていけるだけのお金がありましたが、ついに自由に使えるお金が底をついてしまったのです。今回は、太宰治『斜陽』のあらすじと内容解説、感想をご紹介します！『斜陽』の元となった、『斜陽日記』という日記です。太宰の愛人の1人であった太田静子という女性が書いたものです。「人間は恋と革命のために生まれてきたのだ」という一文が引用されていたりと、『斜陽』に大きな影響を与えたものです。 本名、津島 修治（つしま しゅうじ）。左翼活動での挫折後、自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、第二次世界大戦前から戦後にかけて作品を次々に発表。 『斜陽』の元となった、『斜陽日記』という日記です。太宰の愛人の1人であった太田静子という女性が書いたものです。「人間は恋と革命のために生まれてきたのだ」という一文が引用されていたりと、『斜陽』に大きな影響を与えたものです。 太宰 治（だざい おさむ、1909年〈明治42年〉6月19日 - 1948年〈昭和23年〉6月13日）は、日本の小説家。.